【ベトナム映画祭2018】@横浜会場レポート~後編~
ベトナム映画を一挙に上映する「ベトナム映画祭2018」の第1弾が閉幕して早3週間。遅ればせながら、前編に続いてレポートの後編をお届けします。
後編では、横浜シネマ・ジャック&ベティでの映画祭最終日、9月9日に行われた「サイゴン・ボディガード(Vệ Sĩ Sài Gòn)」の落合賢監督の舞台挨拶を中心に、備忘録を記しておきます。
ベトナム映画祭2018の詳細は公式ホームページをご覧ください。
映画祭最終日(9月9日) 「サイゴン・ボディガード」舞台挨拶
「サイゴン・ボディガード」は、アメリカと日本を中心に活動する落合賢監督が日本人として初めてベトナム映画のメガホンを取った作品です。ベトナム現地で2016年12月に公開され大ヒット。初週の興行成績は、全世界同時公開だった「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」を超えて18万人以上を動員しました。
中の人も2016年の公開時にホーチミン市で行われたワールドプレミアにうかがったのですが、落合監督やキャストの皆さんが勢ぞろいし、さらにものすごい数のベトナム芸能界のスターたちがゲストとして招待されていました。現地メディアも大注目で、現地紙でもこの作品について多数報道されていました。映画についてはこちらもご参照ください。
落合監督と吉本芸人ダブルウィッシュが登場
舞台挨拶は、落合監督がゲストとして登壇し、吉本興業のベトナム住みます芸人「ダブルウィッシュ」のおふたりが司会でした。
会場に現れた落合監督は、白いシャツに黒いジャケット、ジーンズ、赤いスニーカーのいでたち。ダブルウィッシュのおふたりはそれぞれ「ベトナム神奈川親善大使」と「ベトナム住みます芸人」のたすきをかけて、アオザイ姿でした。
落合監督がベトナム映画を作ったきっかけ
まず、そもそも落合監督がベトナムで映画を作ろうと思ったきっかけは「友情」とのこと。映画でも主演を務めたKim Lý(キム・リー)と出会い、意気投合して映画を作ろうと連絡を取り合う中で、ベトナムに来てほしいとオファーがあったそう。そこで二つ返事でOKし、「サイゴン・ボディガード」が生まれました。
友情がきっかけ、ということで、ダブルウィッシュが「僕らも出してください!」とお願いすると、「出…しましょう!」と落合監督。これでダブルウィッシュもいつか落合監督作品に出演か?!
撮影現場はハプニング続き
そして、ベトナムの現場では、ハプニング続きというお話。人が居ないとかあれがないこれがないなんていうことは日常茶飯事で、特に時間の段取りが日本と違い、時間通りに進まないのだとか。
別のスタッフが先に現場入りして準備…という感じでもなく、監督が一番乗りだったり。ダブルウィッシュのおふたりが明らかにした過去のハプニングにもびっくりです。おふたりが現地のテレビ番組のオーディションに行った際、なんと17時間待ちでいったん家に帰ったのだとか。17時間って睡眠時間除いてほぼ丸1日。大変だ…
主演俳優タイ・ホアのアドリブ力
一方で、ベトナムの臨機応変さには助かるともおっしゃっていました。臨機応変さといえばアドリブについても。主演のThái Hòa(タイ・ホア)のアドリブはすごいらしい。映画の冒頭で、ワインボトルの棚が倒れるシーンがあるのですが、うまく倒れず撮影に時間がかかってしまったそう。映画の中ではタイ・ホアが、倒れる棚の中からワインボトル1本だけをつかんで…となるのですが、これがなんと本番のたまたまのアドリブだったと。
また別のシーン、タイ・ホアとキム・リーが船上パーティーに乗り込み、危機を脱するためにタイ・ホアがコンセントに舌を突っ込んで感電するシーンがあるのですが、これもなんとタイ・ホアのアイデアで、昼に話が出て、午後には実際に撮影、と、まさに臨機応変。そしてとんちあり笑いありの名シーンが生まれたのだそうです。
タイ・ホアは顔芸だったりギャグっぽい演技だったりとコメディ寄りのイメージがあるのですが、シリアスなシーンはまたかっこよくて、ほんとに多才な方だなと思います。ワールドプレミアでお見かけしたときに、映画での三枚目っぷりとは異なり、クールな雰囲気でとてもとてもかっこよかったのが印象的でした(イメージが良い意味で変わった)。
スタント要らずのカーチェイスシーン
ダブルウィッシュの中川新介さん的「サイゴン・ボディガード」で好きなシーンが、私と一緒でこっそり嬉しかった。ベトナム語(主に南部)で「路地裏」を意味するヘム(hẻm)の中をバイクで爆走するシーン!
落合監督いわく、ベトナム人は普段からバイクを運転していることもあり、とにかく運転がうまくてカーチェイスのシーンもスタントが要らないのだとか。でもスーパーカブで路地裏や路上の市場を爆走するシーンはものすごい迫力とスリルで、さらにくすっと笑えるので見どころ&おすすめです。
飴ガラスをカナダから取り寄せ
また、他に大変なのはガラスを割るシーンだそうで、日本では飴ガラス(ガラスに似た見た目で、砂糖やでんぷんを加工したもの)を使うのですがベトナムにはそれがなく、本物を使うしかない。でもそんなわけにもいかないので、カナダ人プロデューサーのNiv Fichman(ニヴ・フィッチマン)氏がなんとカナダから飴ガラスを取り寄せたのだそう。
しかしお値段がまたびっくりで、大きなもので1枚なんと輸送料を含めて30万円。途中で割れるとして1枚使えればいいな、で3枚発注し、暑いと溶けてしまうので冷蔵しつつベトナムへ運び、ようやくベトナムに着いたかと思えば今度は飴で甘いので蟻がたかると…蟻がたかるなんていかにもベトナムあるあるで笑いました。(中の人も、ベトナムで飲み終わったジュースの缶をそのまま放置してしまい、蟻にたかられたことが何度あったか…)
ベトナムあるある「虫待ち」
そこで「虫待ち」の話に。ベトナムもとい東南アジアあるある?映画の撮影時は、台詞を話しているヒロインのChi Pu(チー・プー)の顔にハエがとまってNGが出たとか。映り込んでしまったハエをCGで消したりすることもあるそうです。
落合監督のベトナム映画2作目「パパムス」
また、落合監督が手掛けるベトナム映画の2作目「パパとムスメの7日間(原題:Hồn Papa Da Con Gái)」についても。「サイゴン・ボディガード」はベトナムで大ヒットし、世界10か国でも上映されました。そこで今度は日本原作の作品をベトナムでやってみたい、ということで、「パパとムスメの7日間」の韓国版、日本版に続いてベトナム版リメイクを製作することにしたのだとか。タイ・ホアに2作目への出演を依頼したところ、二つ返事でOKをいただいたとのこと。
ダブルウィッシュのおふたりが「3作目は(ダブルウィッシュが)主演でお願いします!」とまたまたお願いする場面も。
「パパとムスメの7日間」はベトナム現地での撮影を終えたばかりで、これから編集作業に入り、ベトナム現地で12月28日に公開されるとのこと。日本での公開は2019年の予定です。
最後に
落合監督から最後に、「ベトナム映画祭のラインナップの中にも良い映画がたくさんありますが、他にもまだまだ隠れているすてきなベトナム映画がありますし、ベトナム自体もすてきな国なので、ぜひ足を運んでください」とのコメントがありました。
これにて舞台挨拶は終了。落合監督とダブルウィッシュのおふたりのテンポが絶妙で、さらになかなか聞くことのできない貴重な裏話が盛りだくさんであっという間の本当に楽しい15分間でした。そして舞台挨拶の後には落合監督のサイン会が劇場のホールで行われました。
「ベトナム映画祭2018」今後の開催地・スケジュール
「ベトナム映画祭2018」、横浜会場は終了しましたが、これから大阪、東京、愛知でも順次開催されます!
<大阪>
10月6日(土)~10月19日(金)
@大阪シネ・ヌーヴォ
詳細はこちら
<東京>
11月10日(土)~11月23日(金)
@新宿K’s cinema(ケイズシネマ)
<愛知>
11月24日(土)~12月7日(金)
@名古屋シネマスコーレ
おまけ:落合賢監督インタビュー記事
皆さまにもぜひ読んでいただきたい落合監督のインタビューをご紹介します(中の人が書いたものです)。
VIETJOベトナムニュース