ベトナム映画「サイゴン・ボディガード」の感想と台詞で学ぶベトナム語※ネタバレあり

※本記事は映画本編のネタバレを多く含んでいます。映画をまだご覧でない方、ネタバレが嫌いな方はご注意ください。

作品概要
Vệ sĩ Sài Gòn (Saigon Bodyguards)
Vệ sĩ Sài Gòn (Saigon Bodyguards)
製作国 ベトナム
題名 Vệ sĩ Sài Gòn
英題 Saigon Bodyguards
邦題 サイゴン・ボディガード
ジャンル コメディ、アクション
公開 2016年12月(日本公開は2017年8月)
監督 落合賢
脚本 Michael Thai(マイケル・タイ)
製作 Niv Fichman (ニヴ・フィッチマン)、Kim Lý (キム・リー)
時間 112分
キャスト Viên (ヴィエン):Thái Hòa (タイ・ホア)
Trịnh (チン):Kim Lý (キム・リー)
Thi (ティー):Chi Pu (チー・プー)
Henry / Phúc (ヘンリー / フック):B Trần (ベー・チャン)
Nhi (ニー):Diễm My (ジエム・ミー)
Kiều (キエウ):Diệp Lâm Anh (ジエップ・ラム・アイン)
Đạt (ダット):Khương Ngọc (クオン・ゴック)
Giang (ザン):Nguyễn Hậu (グエン・ハウ)
Mình (ミン):Lê Bình (レ・ビン)

※日本版DVD「サイゴン・ボディガード」では、Trịnhの役名が「トリン」、Viênが「ビエン」、Thiが「ティ」と訳されていますが、本記事では実際の発音に近い「チン」、「ヴィエン」、「ティー」とさせていただきます。

落合賢監督が日本人として初めてベトナム映画のメガホンを取った「Vệ sĩ Sài Gòn(英題:Saigon Bodyguards、邦題:サイゴン・ボディガード)」。

ベトナムでは2016年12月にベトナム全国の映画館で公開されました。日本では2017年12月にギャガから日本版DVDが発売されています。

決め台詞は「Vệ sĩ Sài Gòn hân hạnh được phục vụ.(Saigon Bodyguards at your service.)」。ちょこちょこ挟まるコネタはズンバ(コロンビアのダンサー兼振り付け師が創作したフィットネス・プログラム、とのこと)。

乳製品製造の大手企業「Le Milk(レ・ミルク)」の会長兼社長が突然死して、葬式に出るべくハーバード大学に留学中の息子ヘンリー(べー・チャン)が帰国。レ・ミルクに勤めるヴィエン(タイ・ホア)の妹ティー(チー・プー)が、兄と兄のパートナーで昔からの想い人でもあるチン(キム・リー)にヘンリーのボディガードを依頼するところから始まります。

ヴィエンとチンのボスであるニー(ジエム・ミー)は、ティーとヴィエンが実の兄妹とは知らずに依頼を受けるわけですが、ティーはバリバリの北部弁、ヴィエンはバリバリの南部弁。ボスが「2人は兄妹なの?(ベトナム語の)発音がぜんぜん違うじゃない」と投げかけると、ヴィエンは「妹は南部生まれ北部育ち、僕は北部生まれ南部育ち、父は南部生まれ北部育ちで中部在住」云々、と答えるんですが、さりげない説明すらも笑いに変えられるヴィエンというかタイ・ホアの演技がすごい。(その後、ティーが兄に向かって「ふ~んだ」みたいな顔をするんですが、その顔がかわいすぎて思わずリピりました。)

ティーとチンはずっと長いことお互い好き同士なのに「ティーを危険な目に遭わせない」というヴィエンとの男同士の約束のためにチンは手を出せず、でも見つめ合ってにこにこしたりして、何とももどかしい距離感。会議室で2人がくっついて座ろうとすると、邪魔したろとばかりに間に入り込む兄もまた妹想いでたまりません。

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【台詞で学ぶベトナム語】
「僕は君をがっかりさせたりしない」→Anh sẽ không làm em thất vọng.
依頼を受けたチンが、ミッションを必ずやり遂げるとティーに約束する場面のセリフです。言い方がめっちゃかっこいい。日本版DVDでは「必ず守ってみせる」となっています。
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ヘンリーが帰国し、2人はボディーガードとして空港で出迎えますが、ヘンリーは「ボディガードなんていらない」と冷たい対応。しかし、父を亡くした悲しみと背負っている会社の重さに押しつぶされそうになっているヘンリーに気づき、寄り添うチン。ボディガードだった父を追って自分もボディガードになったチンでしたが、彼もまた父を亡くしていたためヘンリーの気持ちがよくわかるのでした。

そしてレ・ミルクの会長兼社長の葬式の日。ヴィエンとチンがボディガートについていながらも、ヘンリーが誘拐されてしまいます。誘拐犯を追いかけるヴィエンとチン。

映画の中では、カーチェイスもホンダのスーパーカブ。狭いヘム(路地裏)を疾走し、市場の中を疾走し。ヴィエンは鶏売りのおばちゃんから奪ったバイクでキエウ(ジエップ・ラム・アイン)の乗ったスーパーカブを追い、チンはダット(クオン・ゴック)の乗ったバンにしがみつき。

誘拐犯を追ってヴィエンとチンが至った先は、路上のフォーの屋台。フォー売りの若者フック(ベー・チャン)がヘンリーにそっくり(ベー・チャンの2役)だということで、彼を連行してヘンリーの代わりを務めさせます。謝礼にお金でも女でも何でも与えるからというヴィエンたちの申し出に対して、「僕もボディガードになりたい…」と答えるフック。ちょっともさくてまぬけだけどかわいい。ちなみにこのあたりのシーンのティーは、ぱっちりお目目でコロコロ変わる表情がとてもかわいいです。

ティーは、ヴィエンとチンによる「ヘンリー身代わり作戦」を仕方なく受け入れることにします。身代わりのフックが出席した記者会見も周りにばれずに無事?終わり、やれやれという矢先、また同じ人たちに誘拐されてしまうヘンリー。

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【台詞で学ぶベトナム語】
「チャック開いてるぞ」→Cửa sổ mở toàn ra kìa.
ベトナム語でも「社会の窓」は「Cửa sổ(窓)」なんですね。
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さていよいよ本物のヘンリーを探しに、誘拐犯の主催する船上パーティに潜入します。ここではダット役のクオン・ゴックの狂った演技がものすごい。クオン・ゴックはテレビドラマの「Taxi(タクシー)」(2009年)の、ごくごく普通のタクシー運転手のあんちゃん役もとても良かったですが、サイゴンボディガードや映画「Fan Cuồng(Fanatic)」(2016年)のようなぶっ飛んだ役もとてもうまくて大好きです。

船上パーティの見どころはアクションももちろんですがピンク頭のおかまちゃんLong(ロン)でしょう。ロンを演じているのはプライベートでもゲイを公称しているTô Lâm(トー・ラム)です。八重歯がかわいいです。

そんなイケメン好きのロンに見初められてしまったチン。誘われて出た言葉は…

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【台詞で学ぶベトナム語】
「あ・と・で <3」→Chút nữa coi nhé.
「もうちょっとしたら」、「後で」の意味の「chút nữa」は、日常会話でもよく使います。
また、この「coi」は「みる」という意味ですが、「意識的にみる」といったイメージで、英語の「look at」に近いかと思います。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

何やかやあって、船上パーティから無事に逃げ切ったヴィエンとチンとヘンリー。チンの運転する車の中でセブンアップを飲みながら♪バッドボーイバッドボーイ♪を大合唱。

まぁ一件落着したと見せかけて、ヘンリーがまた連れ去られるんですが…。また、このあたりで、チンとティーがいよいよくっつくか?!と見せかけて、チンはやっぱり「ヴィエンを裏切れない」と断ってしまう切ない展開…

そしてヘンリー探しは続きます。ヘンリー探しと合わせて、レ・ミルクの社内でのあやしい動きも浮上してきます。

このあやしい動きを追う中で、ヴィエンとチンは意見の食い違いでもめてケンカになってしまいます。離れてもお互いがお互いを思い出し、でも素直になれないまま、それぞれが別の方法で誘拐犯を追跡し、ついにPower Milk(パワーミルク)のアジト(工場)に行きつきます。ここで2人は再会、ピンチのときこそ助け合い。美しい男同士の友情。まだまだ戦いは終わらない。そしてダットというかクオン・ゴックの本当の出番はここからです。で、何故か巨大な黒人ボクサーが出てくる。黒人ボクサー、ベトナム語しゃべります。

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【台詞で学ぶベトナム語】
「準備しろ! (=準備はいいか!)」→Chuẩn bị đi!
日本版DVDでは、「Chuẩn bị đi!」が「両手を上げて」となっています。
語尾の「đi」は、「行く」という意味ですが、動詞の後につけて「~しなさい」という軽い命令になります。「Đi đi(行きなさい)」、「Ăn đi(食べなさい)」、「Chạy đi(走りなさい)」など。口調が強ければ命令ですが、弱ければ「~してください」に近い気がします(「Đi đi!」だと「行け!」、「Đi đi.」だと「お行きなさい」、というイメージ)。

「痛ぇなぁ!」→Đau quá má ơi!
日本版DVDでは、「Đau quá má ơi!」が「チクッとしたぜ」となっています。
「とても」を意味する「~quá」は日常でもとてもよく使います。同じ「とても」の意味に「rất」もありますが、「quá」は「超過」の意味もあるので、「あまりにも」に近いでしょうか。形容詞の後につけて「とても~、あまりにも~」となります。「(とても、あまりにも)~だなぁ」という感じでも使います。「Đau quá(痛いなぁ)」、「Ngon quá(おいしいなぁ)」、「Vui quá(嬉しいなぁ)」など。形容詞の前につけると「あまりにも~すぎる」という意味で、「Quá đau(痛すぎる)」というふうにも使えます。
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戦いにも勝利し一件落着!さてさて、最後の一仕事のためにレ・ミルクの新社長を決める会議の場へ。

「3人乗りで捕まらない?」と心配するヘンリーに対してチンが「捕まったら僕が責任取るから」と。チン、どこまでかっこ良いんだ…
バイクに乗ったまま(しかも3人乗りで)エレベーターに突っ込む→会議室に突っ込む。

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【台詞で学ぶベトナム語】
「俺に任せろ」→Để anh.
この「Để」、「~ために」や「置いておく」といった意味がありますが、「Để+一人称」で「自分に任せて」となるので、日常会話でもよく使います。
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からの、ヴィエンの活躍で諸々解決し、ヘンリーが新社長に就くことに決まりますが、ヘンリーは「初仕事」として、レ・ミルクの弁護士のミン(レ・ビン)を新社長に任命する、との決断を下して一連の騒動が終わります。

ここからが私的ベストシーン!ラストですが。

一件落着して、思い出しニヤニヤなチン。ボスからお叱りとお褒めの言葉をもらっていると、ヴィエンがバイクを引きながらティーと一緒にエレベーターから降りてきて、チンに「今夜は祝杯だ」と声をかけます。からの…

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【台詞で学ぶベトナム語】
「誰かさんがお前と話したいってさ)」→Có người muốn nói chuyện với ông kìa.
日本版DVDでは、「誰かさん、話があるって」となっています。
「Có người~」は直訳すると「~人がいる」、転じて「誰かさんが~」となり、その場に「誰かさん」がいて、ちょっとからかうようなシーンで使います。日本語も同じですね。
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チンとティーを残して去っていくヴィエン。

そして!残された2人。オフィスビルのエレベーターホールのど真ん中。

ティー「ごめんなさい。あなたこそ今回のミッションにふさわしかったわ(Em xin lỗi, anh đúng là người phù hợp cho công việc lần này.)」。
※日本版DVDでは「この仕事をあなたに頼んでよかった」。
少し前にヴィエンとチンのミスが重なって、「あなたにはふさわしくなかった」って怒って言ってしまってからのこの言葉。

チン「僕1人じゃないよ、『僕たち』2人の力だよ(Không phải chỉ anh, mà là 2 đứa tụi anh.)」
※日本版DVDでは「俺だけじゃない。『俺たち』さ」。
ティー「じゃぁ…『私たち』2人は?(Vậy còn… 2 đứa tụi mình thì sao?)」
※日本版DVDでは「『私たち』は?」。

で、やっと結ばれる2人!何度も言いますがオフィスビルのエレベーターホールのど真ん中。でもティーがちょっと背伸びしていて、横姿も美しくて、何よりもちょっと上目遣いの「Vậy còn… 2 đứa tụi mình thì sao?」がかわいすぎて、何回も観てしまう。

ラストはちゃんとオチがついていて、エンドロールの後も見逃せません。エンドロールは短めなので、映画館でエンドロールを観ずに席を立ってしまうベトナム人でもオチに気づけるはず!(ベトナムの映画館ではエンドロールの途中で上映が終わってしまったりもします…)

また、冒頭のシーンで出てくる帽子をかぶった富豪のタイ役を演じたMinh Thuận(ミン・トゥアン)は、映画の公開を待たずに2016年9月18日に肺がんで亡くなっており、サイゴン・ボディガードが最後の出演作品となりました。