ベトナム映画「パパとムスメの7日間」落合賢監督インタビュー

落合賢監督が手掛けたベトナム映画の2作目「パパとムスメの7日間(Hồn Papa Da Con Gái)」が、2018年12月28日にベトナムで公開されました。映画は公開からわずか5日間で約50万人を動員、興行収入も約400億VND(約1億9000円)を突破したとのこと。

この映画は、日本の小説家である五十嵐貴久先生が2006年10月に発表した同名小説が原作。日本で2007年に舘ひろし、新垣結衣の主演でドラマ化されたほか、韓国でも2017年に映画化されています。

今回、映画の編集のためホーチミン市に滞在されていた落合監督に、「パパムス」をベトナムで映画化することになったきっかけや映画の見どころ、今後の展望、撮影の裏話などについてお話をうかがいました。

落合賢監督インタビュー(本編)

A-TIM’sの中の人による落合監督のインタビュー、本編は「VIETJOベトナムニュース」の記事をご覧ください。前編と後編、2回に分かれています。

落合賢監督インタビュー(番外編)

ここからは、VIETJOには載せきれなかった撮影の裏話などについてのインタビューです。

―――映画を観て疑問に思ったことをいくつかお聞きしたいのですが、まず、前半部分で芋虫が大量に出てくるシーン、あの芋虫は本物ですか?

あれ、本物ですよ。カメラの上でフライパンをひっくり返して落としました(笑)。食べるのも本物ですよ。食用の芋虫。ゼリーじゃあのリアルさは出ないですし、CGでやるという話もあったんですけれど、(主演の)Thái Hòa(タイ・ホア)さんが「いけるよいけるよ!」って(笑)。Kaity Nguyễn(ケイティ・グエン)さんも触ったりするのは全然(大丈夫)。ゴキブリは嫌いらしいですけれど。芋虫は夕食に出てきましたけれど、美味しいわけじゃないですが、食べられないというわけでもありませんでしたね。

あのシーンでは入れ替わるまでの連鎖反応みたいなことを表現したくて。ボディスワップ系ってほぼ確実に電気ショックや雷に打たれて入れ替わる、というのがあると思うんですけれど、そのパロディですよね。「そうはならないよ!」っていう(笑)。

―――ストーリーの中の重要なシーンで蝶々が出てきますが、あれは「ママ」ということなんでしょうか。

そうですね、(ママの)化身というか。これはベトナムの文化に寄り添った風習なんですけれど、死んだ人が蝶々となって帰ってくると言われているそうで。ベトナムだとよくお葬式のときに蝶々がいて、その蝶々に対して話しかけたりすることがあるということだったので、蝶々にしました。

―――タイ・ホアさんとケイティさん、パパとムスメが入れ替わっているときの演技などで工夫されたことはありますか?

前段階として色々と身体の動きやしぐさの練習はしていたんですけれど、最終的にタイ・ホアさんの意見もあって、それだけではどうしても完全にすることはできないし真似事になってしまうので、やっぱり大切なのは「心」の部分だ、と。心の入れ替わりによって身体の姿勢が変わったり、というのもあるので、心の入れ替わりにフォーカスを当てようということで、リハーサルの方向性をちょっと変えました。

よくあるボディスワップ映画に出てくるような、わざとおかまぶったりする形にはしないようにしようと、あんまりどぎつい、あからさまなことはしないようにしていたんですね。タイ・ホアさん自身、これまでにおかまの役を何度もやったことがあるので、そちらの方にいきたくないというご意向もあって。極限までおじさんぽくしたりだとか、極限まで女の子っぽくしたり、そちらに振るほうが簡単ではあるんですよね、やっぱり。ただ、そういう風なキャラ作りをしてしまうと、やらせっぽいというか、現代の観客が見抜いてしまうんじゃないかなと。

今回の役は、パパとムスメ、2人とも2役やらなきゃいけないっていうのはもちろんなんですけれど、僕は3役だと思っているんですね。というのは、「他の人の前でなりすます」というのも役の1つとしてあると思うので、パパだったら自分自身であるパパ役と入れ替わったムスメ役、そして他の人の前で(本当のムスメに見えるように)なりすますムスメ役、という3つの役を演じなければいけないという。

今回の作品はビジュアル的にもすごくこだわっていて、ムスメのChâu(チャウ)の撮影の仕方と、パパのHải(ハイ)の撮影の仕方が全然違います。チャウの場合はど真ん中に全てのキャラクターがいて、全てがしっかりとシンメトリーになっている。逆にハイのほうは手持ちのカメラで自由に撮っているような形で、2人の世界を映像でも全く変えています。逆に2人が入れ替わるとまたそれぞれの世界(映像)が変わる、という。ぜひそれにも注意して映画を観てみてください!

落合賢監督プロフィール

落合 賢(おちあい けん)

落合賢監督

1983年生まれ。東京都出身。高校卒業後に渡米。南カリフォルニア大学(USC)で映画制作を学んだ後、アメリカ映画協会付属大学院(AFI)映画監督科に進学し修士号を取得。

短編と長編合わせて30本以上の作品を日本国内外で監督し、2009年の「ハーフケニス」でショートショートフィルムフェスティバルジャパン部門最優秀短編賞・東京都知事賞、ローマ国際映画祭最優秀国際短編映画賞、2010年の「井の中の蛙」で優秀賞(国土交通大臣賞)、2014年の「太秦ライムライト」でファンタジア国際映画祭シュバル・ノワール賞(最優秀作品賞)など数々の賞を受賞。

2016年12月公開のベトナム映画「サイゴン・ボディガード(Vệ Sĩ Sài Gòn)」で日本人として初めてベトナム映画のメガホンを取る。現在は米国ロサンゼルスと日本に拠点を置いて活動中。

ベトナム映画「パパとムスメの7日間」は、五十嵐貴久氏の同名小説が原作。2007年に日本でドラマ化、2017年に韓国で映画化。脚本はサイゴン・ボディガードと同じMichael Thai(マイケル・タイ)氏が手掛け、プロデューサーは数々のヒット作を生み出しているCharlie Nguyễn(チャーリー・グエン)氏が務める。

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